同額借り換えなら、実質的に据置期間を延ばすことができる。

2020年、日本政策金融公庫や民間金融機関から多くの事業者が、新型コロナ融資を利用しました。
そのうち公庫で66%、民間金融機関で56%の事業者は、1年以内の据置期間(返済猶予期間)。
昨年コロナ融資を借りた事業者の半分以上は、すでに返済が始まっているか、もう間もなく返済が始まります。

しかし新型コロナウイルスの影響がまだ落ち着かない今、返済が始まってもスムーズに返済できない事業者は相当数いるでしょう。

すでに返済が始まっている事業者の多くは、資金繰りが苦しい中なんとか返済しているものの、相当な無理がかかっています。
また、これから返済が始まるけれど「どうやって返済していこうか」と悩んでいる事業者も少なくないでしょう。

リスケのデメリットを回避できる同額借り換え

そんな事業者の方におすすめしたいのが、「同額借り換え」です。
通常、返済猶予をする場合、金融機関に「リスケ」(リスケジュール、期間や金額など返済条件の変更)をしてもらうのですが、リスケをしてしまうと新規融資が不可能になります。
銀行からの「格付け」が下がるからです。
事業者としては、リスケは何としても避けたい事態です。

同額借り換えなら金融機関も前向きに話を聞いてくれる

一方、金融機関にとっても「リスケ」は避けたいのが本音です。
リスケで取引先の格付けが下がってしまうと、新たに「貸倒引当金」を積み増さなくてはならないのです。
収益的に、悪影響を被ります。

また、リスケを行う際は事業者から「経営改善計画書」を提出してもらい、「条件変更稟議書」を作成しなければなりません。
この事務手続きに、相当の時間と手間がかかります。

「同額借り換え」なら、取引先の格付けが下がることはありません。
また、事業者を取り巻く環境や状況が2020年から変わっていないため、同様の審査を行うことができます。
すなわち金融機関にとって、「同額借り換え」はリスケに比べかなり手間を省けるのです。

同額で借り換えた融資の据置期間を今から1年〜2年で設定しておけば、返済猶予期間が今より1〜2年延びることになります。

すでに返済が始まっている事業者がとるべき施策

たとえば
2020年6月にコロナ融資を600万円借り、据置期間1年、借入期間を6年とした場合
を考えてみます。

この場合、2021年6月から毎月10万円の返済が始まっています。
11月時点では60万円返済しているため、残りの借入額は540万円。
この残債540万円について、取引金融機関に対してこんな提案をしてみましょう。

「返済期間を延ばすため同額(540万円)で借り換えはできませんか」

公庫であれ民間金融機関であれ、基本的には前向きに対応してくれます。

もし可能なら同額借り換えではなく、最初に借りた金額である「600万円」で「借り換えしたい」と依頼してみましょう。
相手の担当者が優秀なら、そのまま600万円で借り換えが可能になることもあり得ます。

これから返済が始まる事業者がとるべき施策

これから返済が始まる事業者の場合は、取引金融機関に「今後の返済が厳しいので、同額で借り換えを」とお願いするだけで、話はスムーズに進むと思います。

ただし、依頼から新たに借り換え分を実行するのに1ヶ月程度はかかるかもしれません。
その間に返済が始まったら、その返済分はきちんと返済しましょう。
そこで返済しないと「延滞」となってしまうため、新規融資をしてもらえなくなるからです。

公庫から借りている場合は急いで行動する必要あり

日本政策金融公庫のコロナ融資(正式名称は「新型コロナウイルス感染症特別貸付」)は、令和4年3月末まで延長されています。

しかし、3月末に、もう一度延長されるとは限りません。
もし延長されない場合、2月中旬以降に駆け込み申請が集中する可能性が高いです。

申請が集中すると、申込から実行までの日数が今までより多くかかります。
公庫の場合、通常なら申込から実行までの日数は1ヶ月程度なのですが、申請が集中すると、それが1ヶ月半、2ヶ月と延びることになります。

もし、申請してから実行まで2ヶ月かかるとなると、2月末に申し込んだとしても、3月末には実行が間に合いません。

そうなると、この制度を使った「同額借り換え」を行うことができず、資金繰りが厳しい中で返済を続けなければならなくなる可能性が高いです。

そうならないためにも、公庫に「同額借り換え」を申し込む場合は、
遅くとも1月下旬までには申請を行うべきでしょう。

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